焼玉エンジンとは



当時の技術で作られたディーゼル機関

このエンジンが現役の頃、まだディーゼルエンジン用の高圧燃料ポンプも、スターター用のモーターもないような頃でした。
何年頃かは忘れましたが、記憶を元に記していますので、多少の間違いもあると思います。
基本的な構造はしたの通りです。

シリンダー外にある副燃焼室に焼玉と呼ばれる鋳物の玉があり、そこに燃料パイプがとりつけられています。
副燃焼室の上には蓋があり、開くと中の玉を取り出せるようになっています。
焼玉には取り出しやすくする為、穴があいていたものもあったようです。

あとは普通のディーゼルエンジンと一緒です。燃料は軽油です。

燃料の噴射圧力は低く、シリンダー内圧よりやや高い程度。焼玉に噴射するというより、垂らすような感じです。
焼玉は熱をもっており、その熱とシリンダーの内熱により気化、発火し、燃焼が始まります。
燃焼時の熱の一部で焼玉は熱せられ、次の燃焼時の火種になります。

酸化し、不純物が混じった粗悪な燃料、セタン価の低い灯油等でも働き、構造が簡単な為、広く使われました。

始動方法

  1. シリンダー上部から焼き玉を取り出します。
  2. 焼き玉はネジ2〜3本程度で閉じられた蓋の中に収められています。
    当時は圧縮圧も燃焼圧も低く、この程度でも十分耐えれました。
    もっとも、古くなると運転中に排ガス等は漏れていたようですが。
  3. 取り出した焼き玉を、たき火等の中にいれて、焼きます。
  4. 真っ赤になるまでなるまで焼く必要はないのですが、始動性を良くする為、じっくり焼いていました。
    エンジンにセットした時点で、急激に熱を奪われる為、寒冷時には2〜3回同じ事を繰り返す場合もあったそうです。
    最終手段として、エンジンの下部で直にたき火を炊いて、始動させるような事もやっていたそうです。
  5. ふたを閉じて、エンジンをクランキングします。
  6. デコンプレバーを引いて、圧縮がかからないようにしてクランクを回転させ、フライホイールの回転が上がったところでデコンプレバーを元に戻します。
    始動できない場合は再び1からやり直します。
  7. エンジン停止はデコンプレバーを引きます。
  8. このころのエンジンは吸気側のバルブはリードバルブ(カムで駆動せず、負圧で開くように弱いバルブスプリングで閉じらている構造)が使われていました。
    デコンプレバーはこのバルブを強制的に押し下げて、圧縮圧がかからないようにしています。

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