ブレーキのトラブル

ブレーキといえども機械もの、当然故障します。

ベーハーロック

ブレーキフリュードもしくは、ブレーキフリュード内に混入した水分が、ブレーキ時の高温により気化し、配管内に空気の泡が発生してしまう状態です。

この状態で、ブレーキを握っても、気泡が押しつぶされるだけで制動力が伝わらず、ブレーキ系統に十分な圧力が伝わらず、効かない状態になります。
気泡が小さい内は、気泡を押しつぶしてしまえばブレーキが効きますが、フワフワした感覚が残ります。

初期状態では、ブレーキで温度が上がり気泡が発生しても、温度が下がるとすぐに気泡が消えてしまい、気づかない事が多いようです。
この前兆として、ブレーキをかけると中の水分がすぐに気化しようとしますが、圧力がかかっているため一時的に沸点が上がり気泡ができません。
しかし、一度放すると、沸点が下がるため一気に気化します。その後すぐにブレーキをかけた時に柔らかい感触があり、制動力のコントロールが鈍く感じられます。
フェードが起きる状態であっても、一発目は効くんです。だから注意が必要なのです。
 こういう状態を感じたら、すぐにでもブレーキフリュードを交換してください。
そうならないためには、年一回の交換を推奨します。

フェード

パッドの使用温度範囲を超えてしまうと、まず最初に潤滑材が融けてでてしまいます。
そうなると、結合材奥にある潤滑材もガスかして噴き出すことになり、表面に潤滑材の膜が出来てしまい、ブレーキの摩擦係数が極端に下がってしまいます。
これが「フェード現象」と呼ばれるものです。

通常の状態ではローターに付着した潤滑材や摩擦材は研磨剤によって除去されます。

初期のフェードでは、内部からガス化した潤滑材が吹き出し、ローターを覆ってしまいます。
またガスになるまえの液化した状態でパッドが浮き上がってしまい、制動力が極体に落ちてしまいます。
それを防ぐためにローターに溝が彫られたものもあります。
 実際、一般道での使用ではスリットが必要なほども高温にはなりません。

後期のフェードでは潤滑材が底を突き、摩擦材と研磨剤だけになってしまいます。
また、熱により結合材がもろくなってしまい、それらを保持できずブレーキの度にバッドが破壊されてゆきます。

今では滅多に見ることが無くなりましたが、こういう症例もあります。

ブレーキ表面に硬質のガラス質膜が出来て、制動能力が落ちる現象です。
弱いブレーキをダラダラ行うと、表面のみが融けてこういう状態になってしまいます。
街乗りでじわっとしかブレーキを使わない人が良くなりました。特にドラムブレーキでこういう状態になりやすい傾向があります。
こうなってしまうと、通常はローター、パッドの両方を交換します。
予算が苦しい場合は、ガラス板の上に#150以下ぐらいの紙やすりを敷き、その上でパッドの表面を全体があたる程度まで研磨して、面を整えてやります。
ドラムの場合、シュー表面を手で均一に削ります。
そして組み付けて安全なところに出向いて強めのブレーキングをしてやることで性能が戻ります。
自動車の場合、自分が所有する車に限り、分解清掃が可能となりました。

サビ

ブレーキフリュードの交換は1年毎が理想です。湿気を吸って、上であったベーハーロックを誘発する可能性があるからです。
しかし、強力なブレーキを使わなければ、制動力の低下は感じられないものです。
しかし、魔の手は確実にプレーキをむしばんでいます。
サビです。進入した水分が金属部を侵してしまいます。
ブレーキはアルミやステン、鉄などの異種金属同士の集まりです。水分が混入するとそこから腐食が始まります。
最悪、虫食いになった隙間からフリュードが漏れだしてしまいます。
たとえ問題なくても年一回ぐらいは交換しましょう。
雨天走行したり、バイクを雨ざらしにしている人ほどきちんと対処してください。
 また、長期間乗らずに放置する人の場合、フリュードが高温にならず、中に入った水分が蒸発できずたまる一方になる場合もあります。
乗っていないからといって劣化しないというのは大間違いです。そういう人ほど、定期的に交換してください。

ローターの偏磨耗

これも、ダラダラとブレーキを行う人に起きやすいトラブルです。
ローターの一部に焼きが入ってしまうと、その部分で制動力が低下してしまいます。この時点ではライダーは気づくことはありません。
しかし、それが進行すると、焼きが入った部分が磨耗せず、それ以外の部分に磨耗が進行し、ローターの厚みに不均一が出来てしまいます。
また各部のゆるみやローターの打撲による変形などでも起きます。
軽微な時はブレーキをかけたとき、ABSのようにカカカッと軽い振動が伝わります。
直ぐにトラブルに繋がることはありませんが(緩みや打撲以外)あまりよろしくはありません。

ホースの劣化

ブレーキホースは消耗品です。定期的に交換しましょう。
色々種類がありますが、個人的な意見ですが、メッシュホースはあまり好きではありません。
ゴム部の劣化度合いが見えないからです。
 また、耐久性に置いては、普通のゴムホースに劣ります。
また、転んだりして擦ったとき、メッシュ部の網が破れると、その針金の先端が突き刺さり、ホースに穴をあけてしまう事もあります。
(自動車ですが実際、そういう症例があったそうです。)
ゴムホースだけでは、そういうことは起きません。転んで激しく擦れても、ホースは何層にもなっているので保護されます。(でも、傷ついたものは速やかに交換してください。メッシュホースも同様です。)
また、メッシュの隙間から砂粒が入り、中で擦れてゴムを削ってしまう事もあります。
 レースユース等の使用期間が短く、ホースの膨張によるブレーキのタッチの変化を重視する点ではメッシュホースは有効ですか、私個人としては街乗り用としてはおすすめできません。

ワイヤーの劣化

油圧を使わないブレーキの場合、ワイヤーを使用しています。
排気量の少ないバイクに使用され油圧のようなトラブルが無い反面、特有のトラブルがあります。
もっとも多いのが、ワイヤーの錆で内部に水が浸入し、それで錆びて動かなくなったり、ワイヤーが切れたりします。
他にも、ワイヤーが曲がった箇所では部分的に磨耗し、ワイヤーが挟み込まれたり、(クラッチに多い症状ですが、ブレーキでもたまに発生します。)太皷の根本で疲労断裂をおこしたりもします。
徐々に重くなるので、本人は気づかないことがあります。同じ方式のバイクのブレーキを握ってみて、軽く感じたりしたらすぐにチェックしたほうが良いでしょう。
定期的な注油も必要で、専用の工具を使って(無くても出来ますが、あったほうが簡単です)オイルスプレーを注油します。
防錆が目的の注油なので、あまり入れすぎないように。また、そのときにワイヤーの切れがないかもチェックしておきましょう。

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