灯油でガソリンエンジンが回る



石油エンジンという機関があります。
始動時に少量のガソリンを使う以外は、100%灯油で動く内燃機関です。
燃料代が安いため、農業発動機のエンジンとして、耕運機などに使用されていました。

そもそも、石油エンジンって何が違うの?

基本的には、ガソリンエンジンと変わりません。圧縮比が6〜7と低いだけです。
しかし、キャブレターに一工夫がしてあります。

通常のガソリンに灯油を混ぜても走行することは可能です。しかし、公道を走るのは「脱税行為」になるため、公道を走る自動車やバイクには使用してはいけません。
ただし、税金分を納付すれば走行可能です。
発電機や農業用などの用途での使用は問題ありません。
(本来ならば、公道で使用しないそういった目的での使用ではガソリン税の一部は支払う必要はないのですが・・・船舶などの軽油燃料は無税ですし。)
あと、125cc以下のバイクの場合、本来52円もガソリン税を支払う必要は無いそうです。

始動時にガソリンを使用できるようにする機構と、気化を促進するため、エンジンの廃熱を利用する仕組み、そして燃調を調節しやすくするための機構です。

キャブレターの構造


詳細は省いていますが、カンソリンエンジン用のと差はありません。
逆に言えば、ガソリンエンジン用のをそのまま使えます。
ただし、灯油ではエンジンの始動性が極端に悪いので、始動時にのみガソリンを使用できるような仕組みが取り付けられています。

ガソリン、灯油切り換え機構

切り換えバルブが一つあるだけです。
バルブを開くと、フロートが機能せず、ガソリンがそのままフロート室に流れ込んできます。
フロート室に入っている灯油を押し出して、オーバーフローしてきますので、それを確認すればバルブを閉じます。
フロート室の下にある囲いの部分に蓄えられたガソリンが、最初に使われ、やがて新しく入ってくる灯油にと入れ代わる仕組みです。
ガソリンの方が灯油より軽いので、このような仕組みが必要なのです。

燃調調節機構

構造は簡単です。ジェットにむけてネジを締めて行くだけです。
締めればジェットの口が閉まって行くため燃調は薄めに、緩めれば濃いめになります。
ガソリンと灯油ではそう空燃比は変わりません。しかし、灯油は気温が低いと気化しにくいため、その分の補正用です。

その他

圧縮比が低いため、排気量の割に出力の低いエンジンです。
高圧縮のエンジンに使用すると、すぐにノッキングを起こしてしまいます。
スロットルを絞り、高い負荷をかけなければなんとか走れるような状態です。
通常のエンジンに灯油を使う場合、ガソリンと混合して使用するのが望ましいでしょう。(本来はガソリン以外の燃料は使ってはいけません・・・アルコールもそうです。)
ガソリンと遜色なく使いたければ、ガソリンと灯油の比率は9:1以下でないとうまく回ってくれません。
ゆっくり、市街地を走るのと同じ速度では最高5:5ぐらいまでならなんとか走れますが、始動性がかなり悪いので点火系の強化をしておいた方が良いでしょう。

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